辻村深月「凍りのくじら」 3.5/5

凍りのくじら (講談社文庫)

凍りのくじら (講談社文庫)

 この点数に納得がいかない人が多いんじゃないかなと思いつつ、つけました。だって、この主人公を最初から最後まで受け入れられないんだもんww
 ちょっと長くなりそうなので、それは後にして、本としては全体的にうまくできてました。プロットはどこかで見たことがあるものなのでまったく新しいものではないんですが、完成度が高かったと思います。ドラえもんと父親と謎の散りばめ方。これがうまいなぁと。ドラえもんというスパイスが巧みに利いてるんですよwwそういう面でいくと、私の基準では4点をつけるべき作品であるはずなんですが・・・・駄目でした。
 話が戻りますけど、これと同じプロットの作品を見たことがあるんですが、タイトルが思い出せない。映画だったと思うんですが、小説だったかもしれない。めちゃくちゃ気になる。やっぱり高校生くらいの少女が主人公で恋愛か何かをしている。そこに不思議な青年というか少年が現れて、少女を導こうとする。最後に何かの問題があって、ふとしたきっかけでそれが幽霊であると気づき、すでに亡くなったはずの父親であると同時に気づく。何だったか・・・・まぁ、似たような話はそれこそタイムマシン関係の話ではありがちではあるんですが。
 さて、この主人公ですが、最初はああなんとなくわかるかもと思いつつも、だったら何でこういう行動をとる?と思っていて、中盤では前半からの流れだとこんな感じになるか?となって、終盤は急に子供っぽくなってどうしたんだ?もうわけわからん。となりました。第三者の視点というか、交わりが少ないので掴みどころがないんですね。人というのは人に認識されて始めて性格が固定されると言われるんですが、要するに付き合う人によって態度みたいなものを誰もが変えている。それがない状態で、自分はああだ、でも実際はああじゃなかったとか言われても付いていけない。中盤は特に流されるように物事を受け入れているだけで、それに対して分析されても、それはただ起こっている事実から自分をそうだと思い込んでるだけじゃないのって感じでした。例を挙げると、
 「私は親友が最近信用できなくなった。それは自分が変わってしまった所為だろう。誰とでも仲良くやってきた自分は本当の自分ではなくて、本当に大切な親友を大切にする自分が本当の自分であると気づいた。でも、現実はどうだろう。本当の自分に気づいたはずなのに、何もかもがうまくいかなくなった。親友との付き合い方は変わっていない。変わらないからいけないのか。あれが悪かったのか、いやそれか。そもそも親友が変わったのかもしれない、いや私がただ間違っていたのかもしれない。」
 みたいな感じですかねwwまぁ、とにかく中盤以降は視野が極端に狭い。ほとんど何も考えない。感じるだけ。状況的にそうなったとも取れるし、ゴールに向かってそうならざるを得なかったとも取れる。そう思わせるのはやはり、序盤から中盤にしっかりとキャラが固まってなかったからかなぁと思う。
 4点にしなかったのは、この主人公がもう最初から最後まで受け入れられなかったからですね。