森見登美彦「夜は短し歩けよ乙女」 5/5

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

 ちょっと話題に乗り遅れた本の紹介です。乗り遅れているのはいつものことなんですけどねww2007年の本屋大賞2位。山本周五郎賞ダ・ヴィンチで賞を取ったということですが。
 大筋は、黒髪の麗しい女子大生が様々な出来事に興味を持って挑んでいく後ろを、大学の先輩が付回し、そこでドタバタが起こる、と言った感じです。しかし、実際の内容は、黒髪の女子大生を大学の先輩が追いかけまわし、周囲に起こったドタバタをそれぞれがそれぞれなりに楽しむという感じでしょうか。あらすじや大筋で見て取られるものとは、実際には多少異なっていると私は感じました。というのも、この小説は先輩とその女子大生の二人の視点から交互に書かれていくからですね。
 そうですね、簡単に言うと、ドタバタものには大きく分けて二つある。ドタバタするのが誰かという観点から分けた二つです。ドタバタするのが主人公たちか、周囲がドタバタしてそれに巻き込まれるのか。このどちらかでしょう。この小説は後者です。明確な違いと言えば、楽しみ方でしょうか。後者は巻き起こる騒動を自分も一緒に何って楽しむことになりますが、前者はわかりやすい後者と違って、主人公たちに共感できなければ楽しめないということになります。あまりややこしい話をしても意味があるのかどうかわからないのでやめますが、個人的には周囲がドタバタする話に対する評価はそれほど高くないです。話の構成力の問題ですからね。
 話として、本作品はよく出来ています。変わった文体も個性という意味で、いい悪いは抜きにして評価できますし、表現も十分満足できます。ですが、私は思ったよりも、個性は強くなく、すっきりとはしないといった感じがしました。一つは、本が本であるという意思というか、メッセージがほとんどないこと。そして、この本にあるアクの強さに似たものを私は過剰摂取しすぎて感性が鈍っている所為ではないかと思う。一般向け、あるいはあまり本を読まない人、読むとしても現代のものをあまり読まない人、偏った本の読み方をしているに対しての評価で一応5にしましたが、個人的には4点かなと思います。この本を構成するすべての要素が完全なエンターテイメントであるということをとりあえず認識して読んでください
 最後に一言だけ。なぜか初期のガンダム臭がしたなぁwwわかってくれる人はいるのかなぁww