西尾維新「刀語シリーズ」 2/5

刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)

刀語 第一話 絶刀・鉋 (講談社BOX)

 まず最初にこのシリーズに対する評価を述べておきます。
期待しない方がいい、です。 
 連続12ヶ月刊行。大河ノベル。これを良しとするかしないかが別れどころになるのではないかと思います。毎月西尾維新先生の小説が読める、という点では私も含め、読者のみなさんにとっては嬉しいことです。ただ、それがこれまでと同じ完成度であればという話ですよね。速ければ雑になるというのは、コンピュータが一定の作業しているわけではないので、当たり前のことです。創作作業においては、尚更でしょう。端的に言い切ってしまえば、おもしろくなくても、12ヶ月連続で読みたいのか、それともおもしろい小説を数ヶ月に一度でいいので読みたいのか、という話でしょうか。
 作者である西尾維新先生からすれば、私達が何を期待しているのかということも多少は考えておられるかと思いますが、それ以上に自分がやってみたいことをやられるのが一番かと思いますが、どうなんでしょうか。そのチャレンジの一環なのでしょうか。恐らく、自分でも内容が薄くなっているんだと自覚して折られるかと。それでも、着々と期限は近づいてくる。ひたすら書き続けるしかないわけで・・・・・・
 私個人の意見としては、大河ノベルをやるべきではなかったのではないでしょうか。のってきている週刊連載漫画だと話がすいすいと浮かぶのでしょうが、小説である以上、本来はただストーリーを追っていけばいいと言う問題ではないですからね。漫画やゲームと違って、小説は完全に書く技術一点に集約されるわけですから、ある意味で芸術なのでしょう。
 とまぁ、そういう話はここまで。以下、刀語の紹介。


 あらすじは簡潔に。
 主人公がヒロインと共に全国を行脚しながら、珍しい刀を12本集めて回るという話です。ポイントは、主人公は刀を使わず、拳法のような物を使うという点ですか。
 あまり内容をあれこれいうつもりはないので、気になったことを少し。

 まず、戯言シリーズで視点がいーちゃんのみであったのに対し、刀語では視点が何度も変わります。こうすることによって、話に厚みが出てくるし、わかりやすくなるわけですが、単純に書きやすいという利点があるわけです。安易に流されると話が薄くなってしまい、まぁ大抵の場合そうなります。刀語も例外ではありません。この辺りはこだわって欲しかったかなぁと。大河ノベルでは難しいか。う〜ん。
 主人公があまり物を考えない。これは致命的かなぁと。小説の醍醐味というか、他においての利点は、その思考の中身をすべて書けることです。思考の過程を描く事は基本的に文章でしか表現できないわけですから、それゆえおもしろく感じるわけです。それを失くしてしまうと・・・ん〜、アニメかゲーム場合によってはエロゲーっぽく感じてしまう。文章が完全に説明や解説だけのように思える。
 今後・・・・・・ストーリー云々とは別に物語の構成という点でも西尾維新先生は卓越したものを持っておられるのですから、今後はその辺に期待したいですね。

 予定では内容にも突っ込みを入れていくつもりでしたが、止めておきます。