個人的な良いミステリかどうかの基準について

 どんなタイプのミステリがおもしろい、すばらしいと感じるかという基準に関しては、人によって色々あると思うんです。そんなことを考えたことがないという人やそんなものはないという人もいるでしょうが、実際しっかりと考えてみるとあるはずです。
 この場で区別していくということはしません。私が思う基準を述べるだけですので、あしからず。

 ・ 犯人が明かされる0.8歩手前で犯人を大体の人が分かる構成
 これが私が良いと思うミステリの基準です。ああ、わかると思っていただけたらうれしい限りですが、ピンとこないという人もいるので説明します。
 基本的に犯人が判明するのはラスト手前です。そこはいいでしょう。そこから0.8歩手前というのがどの場面なのかということが分かりにくいかと思います。
 それを説明する前に、ミステリを二つのタイプに分類しなければなりません。一つは、犯人が明らかになってから説明があるもの、もう一つは、犯人が明らかになる前に説明があるものです。どちらか微妙なものもあるんですが、問題にしたいのは、犯人が先に明らかになって後で説明されるというタイプのミステリは、私の基準とは別にして考えて欲しいということ。解説をしながらだんだんと犯人がわかっていくというタイプを想定してください。
 そう考えると、1歩手前が解説が始まる前となるので、0.8歩とは解説がほんの少し始まったところです。なぜ、0.8歩の地点なのか。1歩手前だと、簡単すぎると感じてしまう。犯人が明かされるまでわからないと、難しすぎると感じてしまう。0.8歩だと、犯人が分かった上で、「ああ、そう!そうだろ?わかった!そうそう、合ってる、それで、これはこうだ!」という楽しみがそれなりに味わえるんですよ。なおかつ、犯人が分かった瞬間、稲妻が走ったようになって、色んな場面のバラバラだったピースがカチッとはまる。その瞬間がいいんですよ!わかりますよね?わかってくれますよね。1歩手前ぐらいでわかってもいいんですけど、それだと、どことなく「ああ、そうね、はいはい。」って感じが出てしまうんですよね。
 あくまで個人的な意見ですけどね。そういう楽しみ方ができることがミステリの醍醐味だと思うんですよね。最後になってから、色んなパターンの展開が考えられるのがミステリ以外のすべての小説で、最後は色々と細分化できるけど、一つの終局(犯人が明らかになる)に向かう展開で終わるのがミステリ。この綺麗に組み立てられた構成が好きなんですよ。
 最後はミステリ好きについて語ってしまいましたが、こういう点を踏まえた上で作者が多くの人にそれを味わって欲しいと考え、0.8歩ぐらいで犯人がわかるように仕組まれてる作品が、おもしろいとか、すごいとか、そういう評価を超えて、良いミステリと言われるんじゃないかと思います。ミステリの本質をついてますから。