文学とライトノベルとギャルゲー その3

 前回のやり残しから。まず脳内補完の話について。人間は経験したことがないことを創造することはできないという話。そうは言っても、実際に人類はここまで進化、進歩してきたじゃないかという突っ込みもあるだろうが、厳密に言えば、あるものを自分の中に取り込んで変化させて外に出すという行為により、生物は進化してきた。一歩ずつ前に進んできたのである。矢じりや石器を使っている時代にはさみが出てくるような一速飛ばしであっても、創造とはいい難いと思う。議論はこれくらいにして、話を元に戻し、一つ検証をしてみようかと思う。
 次に上げていく、単語から人物の顔を想像して欲しい。
 ①ツンデレ
 ②ツインテール
 ③金髪
どうだろう。ある人物が浮かんでは来ないだろうか。さらに続ける。
 ④お嬢様
 私は誰かのことを表現しようとしている。そういう意図があるかないかは置いておいて、その浮かんできた人物はつり目ではないだろうか。
 私が言っているのは、沢近愛理あるいは大空寺あゆだ。どこかでこのイメージがある。ツンデレはつり目であるという不文律があるといった方がいいだろうか。もっと単純に、険しい性格には目がつりあがっている方が表現の上でわかりやすいのからというだけなのかもしれない。いずれにしろ、脳内補完で得られるのは自分が身につけたイメージの中から取り出したものでしかない。
 こういった縛りを受けるのがキャラクターを重視したライトノベルの限界だろう。つまり、特徴的過ぎるキャラは物語を殺しかねず、文学をなせない。魅力のありすぎるキャラにばかり目や視点が移り、全体的な印象がガラリと変わってしまうのだ。ただ、これはあくまでこういった物を作ろうとして生まれたものであるので、限界というよりはイメージの繰り返すことになろうとも、それを楽しんでいるだけの話。私は前回述べたように、ライトノベルのほうにこそ、文学的な未来があると思っている人間である。
 ここで、ひとまず娯楽小説とライトノベルを比較しておくことにする。結論を言えば、普通の小説では決してライトノベルには勝てない。それは可能性の問題だ。現在の世界を基盤とする小説では、何でもありの世界を基盤とする作品には到底及ばない。ライトノベルは歴史も浅く、発展の余地はまだまだ残されている。もう何年もすれば、普通の小説もライトノベルの世界観を取り入れなければ、その将来は右肩下がりだろう。もうすでにそういったデータが存在していることも確かだ。現代人の文学離れが進み、その他の娯楽(ゲーム、映画、パソコン)が伸びている現状で、ライトノベルのみが生き残っていくという将来は目に見えている。しかし、決して娯楽小説がなくなるわけではないだろう。娯楽小説の立ち位置は、親しみやすい文学だ。現実の世界をおもしろおかしく手軽に読むことができるのは、個人の欲を満たすには最適だ。いくら娯楽小説が飽和しようとも、新作に対する期待が存在する限り、消えることはないだろう。
 結局、文学的なライトノベルが増えればいい。そういう話ではないことは勘違いしないで欲しい。ライトノベルを読むことが子どもであるという認識を外すこと。え〜、これをやはり目標に掲げていこうかと思う。前回、ライトノベルにはライトノベルなりに何か学ぶことがある、特徴的なことがあるという結論に持っていこうとした。あれが失敗だったか、成功だったかは置いておいて、今回はもうちょっと詰めてみようと思う。
 ライトノベルを読み続けている人間にはある種の耐性というか、下地ができているように思う。突拍子もない設定であっても、割とすんなり受け入れていたりと。その辺の下地は今後に十分役に立つと思う。前回少し触れたが、物語にどれだけ引き込まれるかというのは、とても重要なことだ。その点に関して、現実の世界を描いていない部分で、ライトノベルは現実の世界を描いた作品よりはとっつきにくい所や想像しにくい所があるかもしれない。しかし、ライトノベルには独特な雰囲気があり、その点は解消されるという話もした。ライトノベルになじんでいる人間にはよりその傾向があるだろう。今の多くのライトノベルはキャラが動き、物語が引っ張られている部分が多く存在しているように思う。そこで一歩引いた物語を描けるかどうか、これがさし当たって、ライトノベルが文学的になれるかという議論の話しになるかと思うが、個人的には今のライトノベルが好きだ。
 ふぅ。さて、話がまとまらないので、ライトノベルの話題はここらで締めてしまおうかと思う。ライトノベルにはまだまだ可能性があり、まったく無視してしまうのは惜しい存在である。そして、これからを楽しむためには、今を疎かにせず、地道に付き合っていこう、ということだ。ただ、今の刺激的なライトノベルに馴れすぎると、その他の作品を物足りなく感じてしまうのが厄介なところだ。
 次回。ギャルゲーという文化について。音と映像と文章の一体化って・・・をお送りいたします。